すみながし

引っ越しを控えているのに本棚は減らせないまま増える一方

まずは自分自身であれ−堀越英美『スゴ母列伝 いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける』

大和書房のウェブサイトでの連載を毎回すごく楽しみにしていた堀越英美さんの『スゴ母列伝』が書籍化された。 スゴ母列伝~いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける 作者:堀越 英美 発売日: 2020/03/12 メディア: 単行本(ソフトカバー) 偉業を成し…

シビアで愉快な女子会−ヴァージニア・ウルフ『ある協会』

最近、ヴァージニア・ウルフ作品を各出版社が様々な媒体で新訳を出しているのをみると、セレクトショップが老舗ブランドのアイテムをカジュアルに取り入れるのを提案しているのを見ているようで楽しい。(しかも本は装飾品と違って価格が安定しているのでお…

日本の書店を懐かしむ

豪の書店が狭いのか、日本の書店が広いのか オーストラリアの大手書店のとある店舗に立ち寄ったときに「州最大の書店」と掲示してあったのを見かけた。 東京都心部の駅ナカや駅ビルの一店舗として入っている書店と同じような売場面積で「州最大」ってあまり…

物語られてこなかったこと−川上未映子『夏物語』

軽い気持ちで 出産や子育ての体験記は本やネット上に数多あれども、出産を扱ったフィクション、それも長編小説というありそうで見かけない作品が出たと知って読んでみたのが、川上未映子の『夏物語』。 夏物語 作者: 川上未映子 出版社/メーカー: 文藝春秋 …

どうなってるの、この島は?−シンガポールの来し方を読む

デザインされた国 シンガポールに観光に行ってきた。半ば成り行きの旅で、初めての上陸だった。 有名観光スポットをいくつか巡り、その豪華さに感嘆し、安くて美味しい中華料理に舌鼓を打ち続けていたのだけれど、私にとって最も印象的だったのは、ナショナ…

あのひとの本棚−Jane Mount, Thessaly La Force 『My Ideal Bookshelf』

さて、何を読めばいいのか オーストラリアの図書館や書店に足を踏み入れて思ったのは、「日本のように鼻が効かない」だった。 和書のように著者名、出版社、装丁から当たりをつけることもできないし、手にとってパラパラと中を見てみても、面白そうかどうか…

主人公はママ、舞台はオーストラリア

短期ながら渡豪するため、現地の文化や習俗を伺い知りたいという魂胆で、オーストラリアが物語の舞台となった小説をぼちぼちと読んできた。 (1) オーストラリアを舞台にした小説で、(2) 日本語で読めて、(3) Kindleで入手可能な、(4) 近年の作品 という条件…

妊娠・出産に関する本たち

本棚の整理を機に、妊娠中に読んでいた妊娠・出産関連の本をまとめてみた。 初めてのことだったので、とても不安でネットでも色々と検索していたのだけれど、ネットだと自分のみたい情報だけしかみない、信用していいのか怪しい情報も多い、際限なくリンクを…

部屋と収入と私-ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』

部屋と収入 新しい家族を迎えて、自分専用の部屋がなくなった。 育児休業で収入はなくなり、長く休んでいるので給付金の受給期間も超えてしまった。 「女性が小説を書こうと思うなら、お金と自分ひとりの部屋を持たねばならない」 小説を書く予定はないけれ…

つるつるハートの子守唄–姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』

素通りできなかった 姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』を読んだ。東大生による強制わいせつ事件に着想を得た小説である。 彼女は頭が悪いから 作者: 姫野カオルコ 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/07/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3…

大きな鳥にさらわれたかのよう−川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』

生殖の未来の物語 人口減社会に関する本を読んでいて(こちらのエントリ)、そういえば、未来を書いたSFって、技術の発展や思想統制の話はあっても、人口減って見かけないよねとふと思ったけれど、以下の記事を読んで、ただの思い込みにすぎないと知った。 …

もっと読みたくなる−「早稲田文学増刊 女性号」

今と今に連なる作品を読む 2017年の秋に発行された「早稲田文学増刊 女性号」をこの秋、少しずつ読み進めてきた。書き下ろしが大半で、再録作、翻訳作品も含めて小説、詩、俳句、短歌、エッセイ、評論と幅広いジャンルの「女性と表現」をテーマにした女性の…

少子化に対するイメージを棚卸しする−内田樹編『人口減少社会の未来学』

気になってしょうがない 子どもが生まれてからというもの、未来について書かれた本が気になってしょうがない。 まず、昨年刊行されて話題になった、河合雅司『未来の年表』とその続編『未来の年表 2』を読んだ。 未来の年表 人口減少日本でこれから起きるこ…

また入院に持っていくなら―茨木のり子『詩のこころを読む』

入院のカバンに入れる本 私の初めての出産は、決められた日に入院しての誘発分娩だった。 経験もなく、忙しいのか、暇なのかよくわからないので、とりあえず本を一冊持って行くことにした。 そこで、入院に持って行くのにうってつけの本とは何かを考えた。 …

120年、変わったことはなんだろうか―シャルル・ヴァグネル『簡素な生活』

近頃流行りのシンプルライフ本ですか?―いいえ、1895年に刊行された本です。 新訳(『簡素な生き方』)が出ているが、旧訳の方を手に取る機会があったので、紹介するのは講談社学芸文庫版。 簡素な生活 (講談社学術文庫) 作者: シャルル・ヴェグネル,大塚幸…

時が解けて新しく紡がれる―清川あさみ・最果タヒ『千年後の百人一首』

レモンサワーとブランケット 最果タヒの詩を読むといつでも、夜、外にいてレモンサワーを飲んでいる気分になる。 星は小さくまたたいて、やさしい風が顔に向かって吹いてきて、ほんのりと柑橘の香りが漂う中、喉に炭酸が弾けて、ヒリヒリとアルコールが流れ…