すみながし

引っ越しを控えているのに本棚は減らせないまま増える一方

シビアで愉快な女子会−ヴァージニア・ウルフ『ある協会』

 最近、ヴァージニア・ウルフ作品を各出版社が様々な媒体で新訳を出しているのをみると、セレクトショップが老舗ブランドのアイテムをカジュアルに取り入れるのを提案しているのを見ているようで楽しい。(しかも本は装飾品と違って価格が安定しているのでお財布にも優しい。)

 

 さて、今回ご紹介するのは、「エトセトラブックス」から昨年刊行されたヴァージニア・ウルフの短編、『ある協会』(片山亜紀訳)。

 Amazonでは取り扱いがないので、個人書店のオンライン通販で購入。

 

etcbooks.co.jp

 

 舞台は若い女性たちが集っているとある部屋の中。そのうちの一人が、男性の書いた本が駄作だと嘆いたのをきっかけに、彼女たちは「質問協会」を結成する。彼女たちは様々な場所へ出かけ、世界の様子を見極めるために男性たちに質問して、その結果を仲間に報告する。さて、彼女たちの未来はどうなる?

 …というのが私なりにまとめたあらすじだけれど、ウルフの面白さは話の筋というより文章にあるというのが私の見解なので、上記のあらすじを名乗る文のことは忘れていただきたい。

 

 読んでみると、戯曲のような作品という印象が強い。というかぜひ、劇場で、舞台の上で見てみたい。

 男性の活動に「納得できるまでは人っ子一人産むまい」と決心するくだりには、アリストファネスの喜劇「女の平和」のセックスストライキを連想するし、語り手の名前はギリシャ悲劇と関連しているので、もしかしたらウルフも戯曲を意識して書いたのでは…?という気がしている。

 

 短い作品ながら、ユーモラスでヘンテコな冒険譚、苦い現実、女性に対する力強いメッセージなどたくさんの味わいが込められている傑作で、訳注と解説も合わせて二度美味しい作品。

 冒頭の彼女たちのように、紅茶を飲みながらどうぞ。

 

 

 同作者の『自分ひとりの部屋』の感想はこちら 

marbledpages.hatenablog.com