すみながし

引っ越しを控えているのに本棚は減らせないまま増える一方

2018-01-01から1年間の記事一覧

つるつるハートの子守唄–姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』

素通りできなかった 姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』を読んだ。東大生による強制わいせつ事件に着想を得た小説である。 彼女は頭が悪いから 作者: 姫野カオルコ 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/07/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3…

大きな鳥にさらわれたかのよう−川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』

生殖の未来の物語 人口減社会に関する本を読んでいて(こちらのエントリ)、そういえば、未来を書いたSFって、技術の発展や思想統制の話はあっても、人口減って見かけないよねとふと思ったけれど、以下の記事を読んで、ただの思い込みにすぎないと知った。 …

もっと読みたくなる−「早稲田文学増刊 女性号」

今と今に連なる作品を読む 2017年の秋に発行された「早稲田文学増刊 女性号」をこの秋、少しずつ読み進めてきた。書き下ろしが大半で、再録作、翻訳作品も含めて小説、詩、俳句、短歌、エッセイ、評論と幅広いジャンルの「女性と表現」をテーマにした女性の…

少子化に対するイメージを棚卸しする−内田樹編『人口減少社会の未来学』

気になってしょうがない 子どもが生まれてからというもの、未来について書かれた本が気になってしょうがない。 まず、昨年刊行されて話題になった、河合雅司『未来の年表』とその続編『未来の年表 2』を読んだ。 未来の年表 人口減少日本でこれから起きるこ…

また入院に持っていくなら―茨木のり子『詩のこころを読む』

入院のカバンに入れる本 私の初めての出産は、決められた日に入院しての誘発分娩だった。 経験もなく、忙しいのか、暇なのかよくわからないので、とりあえず本を一冊持って行くことにした。 そこで、入院に持って行くのにうってつけの本とは何かを考えた。 …

120年、変わったことはなんだろうか―シャルル・ヴァグネル『簡素な生活』

近頃流行りのシンプルライフ本ですか?―いいえ、1895年に刊行された本です。 新訳(『簡素な生き方』)が出ているが、旧訳の方を手に取る機会があったので、紹介するのは講談社学芸文庫版。 簡素な生活 (講談社学術文庫) 作者: シャルル・ヴェグネル,大塚幸…

時が解けて新しく紡がれる―清川あさみ・最果タヒ『千年後の百人一首』

レモンサワーとブランケット 最果タヒの詩を読むといつでも、夜、外にいてレモンサワーを飲んでいる気分になる。 星は小さくまたたいて、やさしい風が顔に向かって吹いてきて、ほんのりと柑橘の香りが漂う中、喉に炭酸が弾けて、ヒリヒリとアルコールが流れ…