日本の書店を懐かしむ
豪の書店が狭いのか、日本の書店が広いのか
オーストラリアの大手書店のとある店舗に立ち寄ったときに「州最大の書店」と掲示してあったのを見かけた。
東京都心部の駅ナカや駅ビルの一店舗として入っている書店と同じような売場面積で「州最大」ってあまりにも狭すぎるのでは、と思ったのだけれど、もしかしたら、日本の書店が広いだけなのかもしれないと思い直した。
私は世界各国の書店のことは知らないし、豪で書店巡りをしているわけでも無ければ、出版事情を調べたわけでも無いので、何かを論じられるわけではないけれど、逆に日本の書店特有の何かがあるのかな、ということが気になり始めた。
ということで、今回の記事は、「日本の書店に特有と思われる売場を削ったら売場面積も結構減るのでは?」という特に意味の無い妄想でお送りします。
なお、この記事で言及している日本の書店とは、全国展開しているような新刊書店のことを指していて、独立系の書店やヴィレッジヴァンガードなどは含みません。
・雑誌
そもそもオーストラリアでは、書店book storeで雑誌を売っていない。雑誌はnews agencyと呼ばれる類のお店で取り扱っている。スーパーやコンビニでも少ないながら販売している。
雑誌の種類自体も、日本は圧倒的だと思う。豪でも英語園の他の国で刊行されている雑誌を売っているけれど、日本ほど種類は多く無いし、売り場に出ている冊数も多くない。漫画雑誌や付録付きムックはもちろん見かけない。分冊百科で有名なデアゴスティーニ社は各国で売っているようだけれど、今のところ見た覚えがない。
アメリカの書店では、雑誌も本も一緒に売っているので、逐次刊行物と書籍を別に売っている国の方が少数派かもしれないけれど、それにしても日本の書店の雑誌売場は結構広いと思う。
・文具
文具も雑誌同様news agencyで扱われている。日本の書店も置いてあったりなかったりだけれど。
・文庫、新書、選書などのレーベル
出版社ごとのレーベルの棚って日本独特な気がする。そしてレーベルの数が豊富。「放送大学のテキスト」の棚なども思えば非常に独特。
・漫画
日本の漫画の翻訳版は、graphic novelというくくりでアメコミなどと一緒に売られているが、あくまで書籍のジャンルの一つであって、日本の書店の漫画売場のような広さは無い。
・学習参考書
塾が出版も手がけている、それも結構な数というのは、日本独自の文化な気がしてならない。
・資格のテキスト
他国にも無いわけではないと思うけれど、日本は資格の種類もテキストも多い気がする。
・英語学習本
豪にも英語を第二言語とする人向けの学習書は売っているのだけれど、断然日本の方がこの手の書籍は多い。
・家計簿
これも日本の書店の年末年始の風物詩のような気がする。キリスト教文化圏においては、クリスマス商戦の時期に家計の引締めにつながるようなものは売りたく無いだろうなぁ…。
と、このあたりの棚をざっくり削ったら、売場面積の広い日本の書店も、だいぶ狭くなるのかな、などと妄想した。ただし、日本の出版点数はかなり多いので、それでもまだ各ジャンルごとの書籍の棚は結構な冊数が残ると思われる。
そして、個人的な印象を書き連ねただけだけれど、日本ローカルっぽいジャンルの出版文化の歴史が気になってきた。「塾の出版文化史」や「学習参考書や資格テキストの書誌学」、「英語学習本のタイトルに見る流行」、「家計簿の歴史」など、誰か研究している人はいるのだろうか…。